援デリ業者の女に「痴漢!」と叫ばれ追いかけられて超怖かった…

恐ろしい話しだが……あったことをそのまま話したいと思う。

今日、俺はとある出会い系サイトで援助交際の相手を募集し、メールをくれた19歳の女に会ってきたわけだが。
待ち合わせ場所に現れた女はサイトのプロフィールの写真とは似ても似つかぬ別人だった。
咄嗟に俺は察した。
『業者だ…』
やられたと思った。細心の注意を払って気をつけているつもりではあったが、また引っかかったのか俺はと。
風俗では味わえぬガチな素人女性との甘美なひと時を期待して出会い系援交を利用すること8年。業者の見極めには自信があった。メールのやり取りの途中でちょっとこの子怪しい…とも思った。でも写真の中のその子は肌の綺麗な清楚な美女で、メールの感じに少し素人っぽい雰囲気が醸し出されていて、業者だと100%断言できるものではなかった。これは素人…か? まぁ写真可愛いし、会ってみて別人(業者)ならすげなく断ってさっさと帰ればいいかと決めて、俺は待ち合わせ場所へと出掛けたのだ。
そして現れたのは別人の女だった。
この女、容姿を言えばそこそこのブスで、まったく抱けなくもないがホテル代とは別に2万(通称別2)を払ってまでヤリたいと思える女ではなかった。
俺は萎えて、即、『帰ろう』と思った。
「あー…別人だね。ごめん、なかったことにして」
そう告げると、俺は足早にその場を立ち去ろうとした。
こうしたことは初めてでない。過去にも何度か会っただけでヤラずに帰ったことはあった。大きなトラブルになることはなく、みんな何も言わずにすんなりと帰してくれた。
だが、今日は違った。
「は? ちょっと!」
と声と共に、俺はショルダーバッグのベルトを女に掴まれてしまった。
女はマジで比喩でもなんでもなく、鬼の形相で俺を睨み付け、帰るな金払え!やら、交通費出せ!やらと、大声を浴びせてきた。いや交通費って。
「…別人じゃん」
被害者こっちじゃん。こっちが交通費をもらいたいくらいだわ。
ベルトをかなりの力で掴まれたまま、ショルダーバッグを強引に引っ張り、尚も帰ろうとする俺に。
「痛い!」
と女は発し、自らの爪を見る。うわ暴力振るってきたこの男…って感じだ。
「俺、なんもしてないじゃん」
俺は自分のショルダーバッグを引っ張っただけだ。女の爪もなんともなっちゃいなかったが、あきらかに俺を傷害の加害者に仕立て上げようとしていた。
女は俺のバッグを離さない。
「離してよ…。なんだよ、こんなことすんのかよ?」
俺は表情を不快に吊り上げて言った。女は、「警察に行くよ!」と言い出した。脅しだ。しかし別に警察など恐れるに値しない。18歳以上の女性にお金を払ってエッチなことをするのは犯罪ではなく、グレーではあるが、合法である。
だから俺は即答する。
「ああいいよ、警察に行こう」
駅前に行けば交番があるだろう、警察に事情を話せば呆れられはするだろうが何事もなく帰れるはずだ。俺は本気で交番に行くつもりで、足を進めようとした。そこで動きに一瞬躊躇いを生じたのは女の方だった。援デリ業者は違法だ。自分の方がしょっぴかれ兼ねないとでも思ったのだろう。
女は俺の顔をスマホで何枚も撮った。
「撮った顔拡散するよ!」
マジでこんなこと言う奴がこの世に存在するのかと思った。
「好きにしろよ」
別に俺はダセーことはしてるがそこまで悪いことはしちゃいない。援交なんて風俗と変わりない。俺の顔写真がネットにばら撒かれたところで誰が興味を持つというのか。
俺は早くこの場を去りたかった。女はずっとスマホを持っていた、強面の男でも呼ばれたら厄介だ。しかし、厄介というだけのことでどうとでもなる。ぶっちゃけここまでの脅し文句は想定済みだった。だが、
「この…痴漢!痴漢!」
女にそう叫ばれた時は、さすがに少しパニックを起こした。
「俺は何もしてないだろ!?」
女はショルダーバッグを離し、俺の尻を蹴り飛ばした。よろけながらもなんとか転ばずに身を持ちこたえ、振り返る俺に、
「キャー!!!チカーーン!!!!!」
女は叫んだ。俺は焦る。――ヤバイ、痴漢はマズイ。無論痴漢などしていない、冤罪だ。でも、痴漢はダメだ。どんな言い訳も通用しない、女の証言が優先される。99%有罪で前科持ちにさせられる。会社もクビになる。痴漢は捕まったら終わりだ。対処法は逃げるしかない。逃げなきゃ、逃げなきゃ!
俺はすぐさま駆け出した。
「その人痴漢です!誰か捕まえてぇええ!!!」
通行人が俺に顔を向ける。たまらず俺は足を止め、叫んだ。
「違います!俺は痴漢なんてしてません!その人悪質な業者です!」
女は駆け出し、俺を追って来た。俺は全速力で逃げ出す。背後に聞こえた女の足音が恐ろしかった。
俺は痴漢冤罪に完全に脅えきっていた。犯罪者にならずに帰るには女を撒くしかないと思った。
陸橋の階段を一段飛ばしで駆け上がり、デパートに逃げ込む。息を切らしながら隠れる場所を探し、雑貨屋の棚の裏に身を潜め、床にへたり込んだ。
しばらくして、追っ手がないことに安堵する。どうやら撒けたようだ。
俺は立ち上がり、少し移動して、デパート店内の隅にベンチを見つけ、腰を落ち着けた。手が震え、心臓は激しく鼓動を鳴らしていた。
本当に難は去ったのか? 俺は尚も恐怖していた。
さらにしばらくして、俺はデパートを出た。この街を早く去らねばという思いで必死に足を歩ませ駅に向かい、電車に乗って家に帰った。
事の顛末は以上だ。本当に恐ろしかったが、無事に帰宅できてよかった。

しかし、逃げたのは悪手ではなかったかと今は思う。

俺は痴漢は現行犯でしか捕まらないものと思っていた。だがそんなわけはなく、調べたところ、犯行の後日に捕まってる事例があった。
どうやら身元が割れてしまうと捕まるものらしい。となると、俺はヤバイ。
もし、仮に、あの女が警察に痴漢被害を訴え、警察が本気で俺の身元を特定しようとすれば、出会い系サイトから俺の身元は割れてしまうだろう。
痴漢をしていない明確な証拠がない俺は、逃げたこともあって「悪質」と評価され、逮捕なんてこともあり得る。

では逃げなかったらどうなっていたか?

無罪を証明する証拠がない。
全ての危機は想定済みでいたが、油断した。準備を怠っていた。痴漢などと、まさかまだこんな手が残されていたとは。
次回からは録画・録音ツールを忍ばせて……いや、そもそも援交なんてやらなきゃいいのか。うん、たぶん、もう、やんない。たぶん…

しかし痴漢とは、なんと恐ろしい犯罪か。痴漢冤罪なんて俺は他人事だと思っていたが、こんなにも簡単に我が身に振り掛かろうとは。ほんと、すげー簡単すぎる。だって、女に「こいつ痴漢です!」って言われるだけで、俺は社会的に殺されるのだから。

ほんと、ほんとに、死ぬかと思った…

いや、無論、まさか警察に駆け込んでるとは思えないが。
万が一、捕まるようなことがあれば、俺は痴漢をしたと認めるしかないのかなと思っている。